素晴らしき一週間が終わる
お笑い芸人・杉浦双亮の挑戦記<8>
「連投いけそうですか?」コーチの一言で気付いたトライアウトの意義
最終登板、マウンドでの気持ち
ここまで僕らが所属するBチームは4勝1敗。調子が良かったこともあってチームの雰囲気は良かったし、僕もいつも以上に声を出した。
回が進み、登板の準備にとブルペンへ向かった。体も肩も重いなかでどんなピッチングができるのか不安でしかなかったけれど、腹は決まっていた。
「あとは気持ちだ」
キャッチャーに向かってボールを投げる。これが野球の不思議なところだ。前回も書いたけれど、痛みを感じないのである。とはいえ体力に不安があるなか、ブルペンで球数を投げ過ぎてもよくないと思い、少なめに抑えてマウンドへ向かった。
最初のバッターは、前にも書いた赤松幸輔選手。今年からオリックスの育成選手となったスラッガーだ。
腕を振って渾身の球を投げ込む。ショートゴロ。ワンアウト。
次のバッター、ショートゴロ。ツーアウト。
3人目のバッターにレフト線へツーベースヒットを打たれる。ツーアウト2塁。
4人目。またショートゴロ。
僕の最終登板。トライアウト最後の登板は1回を投げて被安打1、無失点。トライアウトを通じて最高球速である119キロが出たのもこの日。
とたんに痛くなり始めた肘をさすり、気持ちで投げたこのマウンドを忘れまいと思った。
不安から始まったトライアウトは、充実感に満ち溢れて終わった。
もちろん、その分だけ後悔もあった。それは、もっとしっかりと準備をして臨みたかったというものだ。受験を決めたタイミングが遅かったこともあって、トライアウト前に硬式球を使って練習ができたのは数えるほどだった。